チームの絆はどんな瞬間に表れるのか。
その答えは、試合中や得点シーンのような劇的な場面ではなく、ふとした日常のなかに潜んでいると私は思っています。
練習が終わったあと。
ボールを片づけ、靴ひもを緩め、
それぞれが静かにグラウンドを後にする時間。
私はこの帰り際の空気に、その日の練習の温度や質を感じ取ります。
笑顔でふざけ合っている選手がいる。
無言でも同じ方向に歩く選手がいる。
背中に疲労感があっても、どこか満ち足りた空気が漂っていれば、その日はきっといい練習だったのだと思えます。
逆に、ざわついていたり足取りが重かったりすると、その日の練習にどこか手応えが欠けていたのかもしれないと立ち止まって振り返るようにしています。
プレー中に交わした声。
パスのリズム。
呼吸の合った切り替え。
そういったすべてが、言葉にしなくても“身体を通じて”記憶されていきます。
友情は、ただ会話を重ねた先にだけ生まれるものではありません。
同じ空気の中で、同じ目標に向かって身体を動かす。
そんな時間の積み重ねが、確かな信頼に変わっていく。
グラウンドで育まれる関係にはそういう強さがあります。
個人競技では決して得られない、自分のプレーが誰かを助けるという実感。
それは、サッカーというチームスポーツがもつ大きな付加価値であり、何よりの魅力です。
一生の“共”を得る。
そのきっかけは、いつだって日常の中にある。
ふと隣を見たとき、黙って片付けをしている相手が、自分にとって大切な存在だったと気づく。
そんな瞬間が、きっと彼らの心のなかに何度も訪れることを願っています。
プレーを通して育まれる関係こそが、
選手たちの未来にとってかけがえのない財産になると信じています。