電話を無くして、虹に気がついた
「4年前に携帯電話を落としたんです。公衆電話を使おうとしたら誰の電話番号も覚えていない。携帯に自分の記憶を全部預けちゃっていることに、ぎょっとしたんです。
その後に電車に乗りました。いつもなら携帯を見ちゃうけど、窓の外を見ていたら、四谷辺りで巨大な虹が出てたんですよ。
『あ、虹だ。みんな気づいているかな』と周りを見たら、全員、携帯電話を見ていて誰も気づいていない。自分は携帯を落として困って右往左往したけれど、虹に気がつけた。その時に、メインテーマがカチッとはまりました。
集まった人が、みんな携帯電話を見ている風景の気持ち悪さって、実は誰もが感じている。でも、ほとんどの場合、自分もその一人なんです。だから、視点を入れ替えることで、普段は見落としている感覚とか価値観を提示できないか。そんな思いが、根っこにあった」
(映画の猫はしゃべらない せか猫原作・川村元気さん:朝日新聞デジタル)
川村 元気(かわむら げんき)/初小説「世界から猫が消えたなら」が大ベストセラー、映画化
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