人の成功をサポートする
「ライト兄弟はな、飛行機の発明で特許取った後『飛行機を発明したのは自分らや』言うて、他に飛行機作ろうとしたやつらをどんどん訴えたんや。まあその気持ちは分からんこともないで。人類で初めて飛行機作ったんは自分らやっちゅう自負があるやろうし、それは確かに偉大なことや。でもなあ、ライト兄弟は結果的に、航空会社全体を敵に回して孤立してもうたんや」
「それとは対照的だったのが、グレン・カーチスくんいう子なんやけど、彼も飛行機作りには興味あったんやけど、どちらかというと、気のええやつで『頼まれたら引き受ける』タイプでな。そもそも飛行機もグラハム・ベルくんから頼まれて作りはじめたんや。あ、グラハム・ベルくんいうのは電話機作ったやつな、リンリン鳴る、あのベルの名前の由来や」
「でな、ライト兄弟とカーチスくんが裁判で争うことになったんやけどな、もう完全に明暗が分かれてもうて。あの自動車王ヘンリー・フォードくんがカーチスくんのためにわざわざ弁護士団用意したくらい、カーチスくんはみんなから応援されとった。最終的に、ライト兄弟の作った航空会社はほとんど誰にも知られず姿を消し、カーチスくんの会社はアメリカ最大の航空会社に成長したんや」
「ライト兄弟は飛行機の発明には成功したかもしれへん。でも、その成功をもっと他の人のために使うことはでけへんかったんかなぁ。発明した飛行機で、より多くの人を、より早く、より快適に運ぶことを考えれば、つまり、人の成功を助けることに向かえば、ライト兄弟にも、もっと違た道があったかもしれへんな」
「ええか? 自分が本当に成功したかったら、その一番の近道は、人の成功を助けること」
水野 敬也(みずの けいや)/作家。代表作に「夢をかなえるゾウ」シリーズほか