「学習計画」の前に「人生計画」がある
人生計画を立てることが、いかに重要か。
それを教えてくれるのが、ソフトバンク創業者の孫正義社長です。
孫社長が19歳にして、「人生50年計画」を立てたことはよく知られています。
20代で、業界に名乗りを上げる。
30代で、軍資金を貯める。
40代で、ひと勝負して大きな事業に打って出る。
50代で、事業をある程度完成させる。
60代で、事業を次の経営陣に引き継ぐ。
この人生計画はすっかり有名になりましたが、実は孫社長は学習計画も立てていました。(中略)
高校時代に(日本マクドナルド創業者の)藤田氏の著書を読んで感動した孫社長は、16歳のときに上京して日本マクドナルド本社を訪ね、社長に会いたいと頼み込みました。藤田氏は時間がないと断ったものの、その少年が1週間続けて毎日会社に通ってきたため、熱意にほだされて会うことにします。
そのときに交わされた会話を、藤田氏は自著で次のように回想しています。
彼は、「わたしは九州鳥栖の出身で、これからアメリカに行って勉強したいのですが、なにを勉強したらいいでしょうか。自動車とか飛行機とか石油とか、学びたいことはいろいろあるのですが」といった。
わたしは「今はこの部屋くらい大きなコンピュータを使っているが、遠からずハンディなものになるだろう。アメリカに行って勉強するならコンピュータしかない。コンピュータだけ勉強していらっしゃい」とアドバイスした。
「わかりました」といって少年は、アメリカでコンピュータを勉強して帰国、日本ソフトバンクという会社を創った。
これが孫社長にとって、「アメリカで最先端のコンピュータを学び、自分で事業を興す」という学習のゴールがはっきりと見えた瞬間でした。
坂本龍馬を尊敬していた孫社長は、「世に生を得るは事を成すにあり」という龍馬の言葉に共鳴して「自分も何か大きなことを成し遂げたい」という人生のビジョンはあったものの、まだ高校生ですから「では何をやるか」「そのために何を学ぶべきか」は模索中だったのでしょう。
それが藤田氏の言葉によって明確化され、「人生50年計画」へとつながったのです。
三木 雄信(みき たけのぶ)/トライオン(株)代表取締役社長。英会話は大の苦手だったが、ソフトバンク入社後に猛勉強。仕事に必要な英語だけを集中的に学習する独自のやり方で、「通訳なしで交渉ができるレベル」の英語をわずか1年でマスター