「できない」と向き合い続けた君たちへ
10期生のみんな、卒団おめでとう。このチームで過ごした時間は、みんなにとってどんな意味を持ちましたか。
中学3年間、勉強もサッカーも、最初は「好き」で始めたはずなのに、いつからか「できないこと」にばかり目が向くようになった。
できるようになったことも増えているのに、それ以上に、やるべきこと・できないこと・わからないことがどんどん増えていった。
「好きなことをやるって、いつでも楽しいってことじゃない」
この言葉の意味を、みんなは誰よりも知っているはずです。できないことに出会い、分からないことにぶつかり、そのたびにストレスを感じたはず。それでも向き合い続ける勇気があった。グラウンドの上でも、机に向かっても、毎日の中で何度も踏みとどまり、もう一歩を踏み出してきた。
受験も、ただの通過儀礼のひとつに過ぎません。提出物のひとつ、くらいに思っています。でもその中で、「自分ってどういう人間なんだろう」と、少しだけ立ち止まって考える時間にしてほしい。
時間をかければいいってものではない。わからないことに興味を持つ。できないことに立ち向かう勇気を持つ。そこから始まらない限り、どれだけ時間を費やしても、快適ゾーンを散歩しているだけです。
そして、その“勇気”こそが、これからの“足腰”になります。
「スポーツは人格を形成するのではなく、人格を露呈する」この言葉を、私は強く信じています。
逃げ癖も、チャレンジする姿勢も、他責の癖も、自責の強さも、全部サッカーの中に表れます。
別の競技に変えても、たぶん同じように“今の自分”と向き合うことになるはずです。だからこそ、やるべきこと・やりたいこと・できることのバランスを、大切にしてほしい。
無理せずラクに続けられそうな道ばかりを選ばないでください。チャレンジして、前のめりに転んで、痛みを知ること。それは、将来きっと忘れられない、大切な経験になるから。
ラクすることと、楽しいことは、真逆にあるんだってさ。
本気でやった失敗には、価値がある。本気の取り組みは、人を動かすし、自分を豊かにしてくれます。
うまくいかないとき、落ち込んでいるときにそばにいてくれるのが“仲間”です。このチームで出会った仲間の存在を、これからも大切にしてください。
これから、周囲の声が不安をあおってくることもあるかもしれません。知らない人や、努力を見ていない人ほど、「もうやめたら?」「意味ないじゃん」なんて言ってくるかもしれない。
でも、みんなのもがいている姿を、私はたくさん見てきました。だからこそ、はっきり言えます。
君は、続けた方がいい。
これからの人生は、「受験のための勉強」から「学びのための受験」へ、「勝つためのスポーツ」から「自分と向き合うスポーツ」へ、少しずつ変わっていくかもしれません。
負けない方法なんて、知りません。何度も負けるし、何度も折れる。でも、そのたびにもう一度立ち上がれる“足腰”があるかどうか。それが、人生の勝負を分ける力になります。
卒団、おめでとう。このチームで過ごした時間は、きっとこれからの君を支えてくれるはずです。
またアンビシオンでサッカーがしたくなったら、いつでもボールを蹴りにおいで。後輩たちと一緒に、楽しみに待っています。