中学生の試合では、体格差やスピードの違いが結果に大きく影響することがあります。
背が高い選手、体が強い選手、足が速い選手。
試合では確かに「強い者」が主導権を握る場面が多く見られます。
でも、その「強さ」は、いつまでも続くわけではありません。
身体的な差は、成長とともに少しずつ縮まっていきます。そして最終的に、選手として差がつくものは、自分の力で状況を理解し、判断し、修正していける力です。
「賢者は強者に優る」
この「賢さ」は、ただ知識があるとか、頭の回転が速いということを指しているのではありません。
“自分の中でサイクルを回せる力”のことだと、私は思っています。
プレーの中で状況を把握する。
その状況に対して判断を下す。
判断を技術で表現する。
結果を受け止め、次に活かす。
繰り返しながら、自分で調整していく。
この一連の流れを、誰かに言われるのではなく自分で回していける選手こそが、本当の意味で「強い選手」になっていくのだと思います。
そして、そのサイクルを支えるのが「基礎技術」です。
止める。蹴る。運ぶ。
どれも当たり前のように聞こえるかもしれませんが、その“当たり前”の積み重ねが、自分のプレーを支える大きな武器になります。
技術がなければ、考えたことを表現することはできません。技術があるからこそ、考える意味が生まれ、行動を修正する力が養われていきます。
「基礎技術」は、目立つプレーとは違い、派手さもありません。
でも、それがあることでプレーに選択肢が生まれ、仲間を助けるプレーが可能になります。
試合の中で、「あの選手と一緒にいると安心する」と思わせられる選手がいるとすれば、それは、基礎技術に裏打ちされた信頼があるからです。
たしかに、今はまだフィジカルの影響が大きい年代です。
しかし、それに甘えすぎず、“自分の頭と体でサイクルを回せる選手”を目指してほしいと思います。
考えて動く。動いて、また考える。うまくいかなかった理由を、自分の中で解釈する。
その繰り返しを習慣として持っている選手は、どんな相手にも臆することなく、立ち向かうことができます。
それが“自然”になってきた頃には、きっとサッカーそのものの見え方も変わっているはずです。
すばらしい基礎技術を持ち、自分で考え、自分で修正し続ける。
そんな選手が、サッカーをより謳歌することができます。
試合中の一瞬だけでなく、日常の過ごし方や練習への取り組みの中にも、自分でサイクルを回す姿勢を忘れずにいてください。